

沖縄には「泥沸かし」という不思議な名前の郷土料理がある。文字だけを読むと思わず泥水を沸かしたものなのかと考えてしまうが、これはイモの煮物をつぶして練ったものなのだ。「泥沸かし」はドゥルワカシーと発音し、祝い事がある時に必ずと言っていいほど登場する代表的な郷土料理なのである。作り方は少し手間がかかるが難しくはない。使用するイモは沖縄特産のターンム(田芋)と呼ばれる水イモで、これを豚肉などと一緒に炒めたムジ(ターンムの茎)と煮込む。ターンムが柔らかくなったらスリ鉢に入れてつぶして練れば完成だ。見た目が土色で泥のようになるから「泥沸かし」という名前が付いたという人もいるが、本当のところはわからない。ただ、はっきりいって見た目は美しくはない。だが、それも見ている時だけの話。一度箸でつまんで食べたら、そんな外見のことなどどうでもよくなるほどおいしいはずだ。特にターンムのコクがなんともいえない味なのである。地元の人たちはニンジンやグリンピースなどを入れて、彩りのよいドゥルワカシーを作っている。沖縄旅行のときの酒の肴にも欠かせない一品だ。
七尾湾に面した能登半島の和倉温泉は、海の景観にアクセントを添えている。沖に浮かぶ能登島と、そこに繋がる能登島大橋。能登島には臨海公園と水族館、美術館、ゴルフクラブがある。その島に渡ることを容易にした橋梁建築は楽しみのメタファーである、というのが考え過ぎだとしても、このまだ新しい橋はなかなか美しい。和倉温泉の、その橋が良く見える場所に建つ老舗旅館が『銀水閣』。海に面した立地を、景観だけでなく最大限に楽しませてくれる宿である。何しろ、浴衣の宿泊客が庭で釣りをしていたりするのである。もちろん海釣り、庭が岸壁を持っている。同じような仕掛けが「渚プール」。海ぎりぎりにつくってあり、泳いでいると海と繋がっているような錯覚をおこすほどだ。「波打ち際の露天風呂」と名付けられたのもその趣向。水際すれすれの、海との一体感を面白がることができる。これは楽しい。さらにこの旅館は、共同の大浴場は男性用、女性用とも可能な限りガラス窓を大きくしており、こちらからの海の眺めも素晴らしい。ジェットバス、パイプラパス、ボディシャワー、打ち背の湯、サウナもあり、風呂の楽しみは全網羅といったところ。夜は漁火が綺麗に海面に映える。海に面した風呂は漁火見物の特等席である。車のライトが視界を横切っていく能登島大橋の眺めも昼とは違って一興である。この感覚を部屋まで持ち込めるのが、専用露天風呂付き客室のいいところだ。露天風呂はバルコニーに造ってあるので、海は目の前にある。ガラス戸で繋がった内風呂にも陽が入り、こちらでも海が見える。朝の入浴など気持ちがいい。また、同じ日本海側の温泉とで忘れてはいけないのが、夕日ヶ浦温泉である。夕日ヶ浦温泉には、毎年多くの人が「温泉・食事・景色」を楽しみに訪れるのである。